ナノメカニクス講座
村岡・趙研究室
教授:村岡 幹夫 講師:趙 旭
小さな世界の大宇宙「ナノテクノロジー」
近年、ナノテクノロジーによる機械の小型高性能化は目覚ましく、普段の生活でもコンピュータや携帯電話などの製品を通してその恩恵を実感できます。こうした進歩には、部品の一つ一つをナノスケール(10億分の1メートル)で小さく作り出すことはもちろん、目に見えないサイズの加工や性能評価などの技術が重要となってきます。本研究室では、ナノ構造体の創製・加工・評価などの様々な方法でナノテクノロジーに取り組み、伝統的な機械工学の枠を超えた他分野への展開を目指しています。また、医療への貢献を目的に、ナノ・マイクロ領域の力学を基にして、生体モニタリングなど人間対象の研究も行っています。
図1 独自の技術で作り出した様々なナノ構造体を電子顕微鏡で観察している様子。ナノコイルはバネとしての利用はもちろん、極小の電磁石や電磁波吸収材として応用が期待できる。また、ナノチューブやナノフラワーは、広い表面積を有するため、化学触媒、センサなどへの応用が期待できる。
図2 センサの上に寝るだけで心拍と呼吸の同時モニタリングが可能
専門分野 |
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材料力学、ナノテクノロジー |
研究テーマ |
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渋谷研究室
教授:渋谷 嗣
計算機による複合材料と機械構造の設計
機械の設計は、試作と実験の試行錯誤によってもできますが、国際競争の厳しい現在では、計算機を用いたシミュレーションなしに、世界で通用する機械を設計開発することは、困難となっています。
本研究室では、マルチスケール(材料組織と機械構造レベル)、マルチフィジクス(熱、電場、磁場と固体変形の相互作用)に基づく複合材料などのシミュレーション法に関する研究を行い、各種機械構造の設計や構造の損傷評価を行っています。
近年、CFRP(炭素繊維複合材料)は、航空機の主翼や胴体などの主要構造部材として利用されています。機体に作用する外力と繊維配向を持つ複合材料内部の応力状態をマルチスケールとして捉え解析することが必要です。また、複合材料は、複数の材料を組み合わせていろいろな特性を作りだすことが可能です。たとえば、樹脂に熱伝導性粒子、導電性粒子、磁性粒子、多孔質性粒子などを組み合わせることによって、新たな機能をもつ材料を創製するができます。このような材料のモデル化と特性評価によって、材料とそれを応用した機械の設計が、本研究室における研究の目的です。
図1は軽量な多孔質性材料に強化粒子を添加し、内部の構造を変えて、内部の力の伝達における変化を調べたものです。
図2は大型の宇宙構造物を模擬して、微小な振動応答から損傷位置を調べたものです。構造に損傷がある場合、損傷は、グラフにおいて負のピークとして検出されます。
図3は圧電素子の微小な伸びを拡大して、100μm×100μm範囲の平面上をナノオーダーの分解能で高速に位置決めするステージです。これは、計算機を用いて設計したものです。
専門分野 |
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固体力学、複合材料力学、計算力学 |
研究テーマ |
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奥山研究室
教授:奥山 栄樹
より高精度な測定と設計
機械では形状を設計する際には直線と円を組み合わせるのが基本になります。工作機械が製品を作る際に、直線と円の動きが基本になるからです。古くから、直線やXステージなどの案内面移動誤差を測定する方法としては、直定規やオートコリメータなどのハードウエア的な基準を用いる方法が行われてきました。当研究室では、反転などの置き換えで複数回の測定を行ったり、あるいは、複数のセンサで測定を行った結果を数値処理してハードウエアデータム以上の精度を実現するソフトウエアデータムと呼ばれる方法を中心に研究しています。
図1は、真直形状や案内面移動誤差の測定を行うソフトウエアデータムの実験装置です。マイクロメートル以下の測定を行っています。
図2は、直径2mm程度の細い管の中の形状を測定する装置の概要です。スタイラスで管内の形状の信号をピックアップし、それを光の信号に換えて光ファイバを用いて管の外まで持っていった後、フォトダイオードで電気信号に換えます。
専門分野 |
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精密測定、超精密設計 |
研究テーマ |
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宮野研究室
准教授:宮野 泰征
革新的生産プロセス開発と材料の環境特性評価
接合技術は、現代の文明社会を支える重要な基盤技術の一つです。このような接合技術に関わるテーマに本研究室は二つの観点から取り組んでいます。
一つは、新しい接合技術として期待される摩擦撹拌接合に関する研究です。この方法は、一般に良くしられる溶接とは全く原理が異なり、金属を(溶融させずに)固相のまま接合する技術です。溶接時の材料特性の劣化を回避できるだけでなく、環境、人に優しい生産プロセスとしても期待されています。
もう一つは、ステンレス鋼溶接部の微生物腐食に関する研究です。金属の溶接部は、接合時の熱履歴によって材料的特性が、施行前と大きく変わってしまう場合があります。このような材料の特性の変化により、環境中の微生物の活動が刺激される場合があります。微生物腐食は、このような材料的名要因により、材料の腐食・劣化が微生物により誘導される現象と言えます。
環境中の微生物と材料の相互作用を研究することで、腐食に強い材料、生物が関与する汚れに強い材料等を開発するための技術が期待されています。
図1は、摩擦撹拌接合の様子です。ツールとよばれる回転工具が回転運動し、材料に摩擦熱を発生させています。この工具が走行することで、材料は軟化、一体化し接合が実現ざれます。
(写真提供:大阪大学接合科学研究所 藤井研究室)
図2は、微生物腐食と結論づけられたエネルギープラントの被害部の様子です。腐食に強いはずのステンレス鋼に数ヶ月で孔が開形成された際のミクロ(電子顕微鏡)写真です。オーステナイト相が選択的に溶解され、スケルトンとよばれる腐食構造が確認できます。
専門分野 |
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接合工学、微生物腐食、抗菌性金属材料 |
研究テーマ |
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山口研究室
准教授:山口 誠
光散乱分光法による固体表面層の構造解析
超精密加工、マイクロマシン、機能性表面、トライボロジー特性など機械工学における様々な分野において、表面構造を制御することによる性能向上が取り組まれています。そのために、サブミクロンスケールの微小領域における極表面層の構造評価が重要かつ不可欠になってきています。光と物質の相互から生じる光散乱現象であるラマン分光分析技術は、非破壊・非接触で表面の結晶構造や応力・ひずみを評価できる有力な手法です。ラマン分光分析法を用いて様々な材料・デバイスの表面構造の評価を進めるとともに、新規ラマン分光分析技術の開発に取り組んでいます。
図1はSi単結晶に機械的な押込みをした圧痕です。ラマン分光分析により、圧痕中心では、不安定相への構造相転移、周辺部には大きな残留応力があることがわかります。
図2は表面に非晶質層があるSiのラマン散乱スペクトルです。鋭いピークが結晶、広いピークが非晶質に対応し、異なる波長を用いることによって非破壊で深さ方向の情報を得ることができます。
専門分野 |
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レーザ分光、ラマン散乱分光、表面構造評価 |
研究テーマ |
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山本研究室
准教授:山本 良之
機能性ナノ材料の開発と応用
一般に物質をナノメートルサイズまで小さくしていくと、その性質がサイズに依存して変化する新しい機能をもった材料となります。特にナノ粒子は、それを構成する原子の数に対して表面にあらわになっている原子の割合が非常に大きいため、同じ物質でもバルク(塊)の状態と大きく性質が異なることが予測され、驚くような性質が隠されている可能性がある興味深い材料です。 また、磁気を帯びた磁性ナノ粒子は近年、磁性流体として温熱療法(ハイパーサーミア)、薬物輸送(DDS)、MRIの造影剤、磁気分離などの医療やバイオ分野への応用が期待されています。 本研究室では、こういったナノ材料の合成から評価までを一貫して行い、ナノ材料の新奇基礎物性の探求とその応用による実社会への貢献を目指して研究を行っています。
図1は合成した酸化鉄ナノ粒子のTEM像で約10 nm程度の均一な粒径をもつことが分かります。実際には挿入図のようにナノ粒子表面は界面活性剤で修飾されています。
図2は溶媒に分散した酸化鉄ナノ粒子の写真で、磁界がないと粒子の磁化はランダムに向いた超常磁性状態となっていますが、磁石を近づけると磁界に配向して液体のまま引き寄せられていることが分かります。
専門分野 |
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磁性材料、固体物理 |
研究テーマ |
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